建築施工管理技士Mです。
今回ご紹介します物件は、某工場の漏水調査です。
天井から漏水している物件で、屋上防水の改修提案を致しました。
調査の際はまず室内の漏水箇所を拝見し、その後屋上を確認しました。

既存防水は、元の防水層の加硫ゴム系シート防水(以下、ゴムシート)の上に接着剤でゴムシートを貼り付ける「接着工法」でした。
平場部分では防水層のジョイント(つなぎ目)が破断し、めくれてしまっている状態でした。

また、建物周囲の一段高くなっている部分を「立ち上がり」と呼ぶのですが、その立ち上がりが
めくれており雨水が防水層の裏に浸水する状態でした。
これでは雨が降るたびに漏水が発生します。

以上の状態から、既存の防水層がすでに機能を果たしていないため、
防水改修のご提案となりますが、主な改修方法は2工法あります。

①既存防水層はそのままで、ゴムシート又は塩化ビニル樹脂系シート(以下、塩ビシート)重ねる機械的固定工法(かぶせ工法)
②既存防水層は撤去のうえ、ゴムシート又は塩ビシートによる接着工法(現状の方法と同等)

多くの場合は、①の機械的固定工法を提案する事になります。
機械固定工法とは床面に多数の金属ディスクをビスで打ち込み、その後に敷きこんだシート防水を
円盤と接着させる方法です。
既存防水層を残したまま改修できる為、省力化や、コストを抑えることが出来て、多くの現場で
採用されている防水工法です。

しかし、今回はあえて②の既存防水層は撤去した上で、ゴムシート防水の接着工法を
ご提案しました。
今回の建物は屋根面にALCパネルと言う、鉄骨造の壁面などに用いられる建材が使われております。
ALCとは「オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート」の略称で、厚み80~150mm、
長さ2.4~4.5m、幅300~600mmの硅石・セメント等を原料とした板材です。
コンクリートに比べて軽量で、断熱性や耐火性にも優れますが、寸法が決まっているためパネルの
つなぎ目が出来るので漏水の原因となります。
また鉄骨造はあえて建物が動く前提で設計されるため、ALCパネル同士も動きが発生します。
(数㎜から数㎝程度ですが。)

今回、ゴムシートを提案しましたのは、上記の「ALCがよく動く」が理由です。
ゴムシートは下地の動きに対する追従性と下地になじむ柔軟性が優れており、下地が50mmの亀裂を
起こしてもシートは破断しないとされています。(メーカー実験)
しっかりとした施工と適切なメンテナンスを行う事で、長期に防水性能を維持することが可能です。

次に接着工法をご提案した理由は、「ALCへの負担が小さくなる」からです。
ALCはコンクリートよりも軽量な材料なのですが、コンクリートよりは強度が低く、荷重による負担
が大きくなります。
機械固定工法をした場合、ディスク固定のためにALCに多くの穴をあけることになります。
ALCに穴をあけ、更に今回は3回目の改修となるため、更に防水層を重ねる事により荷重が増え
ALCへの負担が大きくなります。
そこで一度防水を撤去してしまい、接着工法を行うことで、ALCへの負担をリセット させることを
考えました。

もちろん、既存の防水層を撤去するため、工事中の急な雨などによる漏水リスクが高くなるため、
撤去後は仮の防水材を施工するなどの対策も行います。
以上の内容を踏まえて取引のあるメーカー担当者と提案書を作成し、お客様にご説明した所、
ご納得いただき、受注に繋がりました!

これまでの経験を踏まえて、「プロ」の提案とは何かを考えながら日々活動をしています。
それはリーズナブルな仕事をするだけではなく、まず建物に最適な提案する事だと考えています。
その上でお客様の求められている事に対してしっかりすり合わせをする事だと思っています。

 改修工事は場合によっては何百万という費用がかかります。長期的にみて
「コスパのいい工事だった」と思っていただけるようなご提案をしてまいります。

現場の環境やお客様のご事情等様々な条件はありますが、僕たちが「防水のプロ」として
少しでもご満足いただけるような提案が出来るように日々頑張ります!

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