建築施工管理技士のNです。
今回は修繕工事における石綿(アスベスト)についてのお話です。

近年、法改正により新規に石綿製品が製造・使用されることはなくなりましたが、石綿含有製品の使用等が全面的に禁止された2006年よりも前に施工された建築物には石綿含有建材が使用されている可能性があります。

大規模修繕工事や屋上防水修繕工事を行うにあたり、居住者や施設利用者・近隣住民・作業員の健康を守るため、また廃棄物として石綿を拡散させないためには

①石綿含有建材の使用箇所を特定する
②工事中に石綿を空気中に飛散させないよう対策を講じる
③工事で発生した石綿含有廃棄物を適正に処理する

この3点が非常に重要です。

本日はこの3つのポイントについて解説いたします。

①石綿含有建材の使用箇所を特定する
大規模修繕工事において石綿の含有が疑われる箇所の例として

〇外壁・天井の仕上げ塗材・下地調整材
〇屋上アスファルト防水層
〇勾配屋根のスレート板・アスファルトシングル
〇バルコニー隔て板・天井等のケイ酸カルシウム板
〇ロックウール吸音天井板
〇タイル下地モルタル等の左官材料
等があげられます。

修繕工事を行う際は可能性のある建材について石綿含有の有無を判定する「事前調査」が法律で義務付けられています。新築時や過去の改修時の資料等から含有の有無が判断できない場合は、検体を採取し専門の分析機関で分析調査を行います。令和5年10月からこの事前調査は「建築物石綿含有建材調査者」の有資格者が行うことが法制化されました。

有資格者による検体採取状況

タイルの下地モルタルにも石綿が含有しているケースがあります。
左官職人が現場でモルタルを練る際に混和剤として添加している可能性があるため、施工記録等の書面から含有の有無を判断することは困難であり、検体を採取して分析にかける必要があります。検体採取時も飛散養生・保護具着用が必要です。

②工事中に石綿を空気中に飛散させないよう対策を講じる
①で例として挙げた建材はレベル3の石綿含有建材に分類され、そのままの状態では害のあるものではありませんが、対策を講じずに切断や穴開け、破砕等を行うと空気中に石綿粉塵が飛散してしまいます。
例えば、外壁の仕上げ塗材・下地調整材に石綿が含有している場合は
・仮設足場の壁つなぎを取るための穴あけはHEPAフィルタ集塵機付ドリルで行う
・外壁補修で劣化部を撤去する際は湿潤化し、手工具で行う
・作業員は石綿粉塵に対応した防塵マスクを着用する
・「石綿作業主任者」有資格者が作業を指揮する
 等の対策が必要となります。

③工事で発生した石綿含有廃棄物を適正に処理する
撤去した石綿含有建材や集塵機のフィルタ等は石綿を含む産業廃棄物となりますので、他の廃棄物と分別して厳重に保管するとともに、許可を受けた運搬・処分業者に引渡して無害化処理を行う必要があります。

以上3点は施工業者が責任を持って行う内容ですが、施主側にとってはこれらにかかるコストの見極めが重要です。

当初予算として①の費用のみを見込んでおいて、
②③は調査の結果次第で精算工事とするという手もありますが、調査結果によっては
・予想以上の追加費用が発生する
・仕様変更による大幅な費用・工期の見直しが必要になる
といった事態になる可能性があります。

発注前に予備調査を行い、石綿含有箇所を特定しておけば施工業者は石綿の含有状況に合わせた工法・工期等の提案をスムーズに行うことができ、施主側も予算の見通しを立てて発注することができます。

弊社には今年10月から資格要件化された「建築物石綿含有建材調査者」が複数名在籍しておりますので、現地調査から検体採取、調査結果の報告まで一貫して対応可能です。
また、石綿の含有状況に合わせた各種工事のご提案もさせていただいております。
ぜひお気軽にご相談ください。